news letter vol.37 : Tiffany Rugという伝説のラグ
2022年12月1日
MUNIでは、月に1度メールマガジンをお届けしています。
その内容をこちらでも紹介させていただきます。
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クラシカル・チャイニーズ・ラグには様々な名品がありますが、そのなかでも「Tiffany Palace Carpet」、通称:Tiffany Rug(ティファニー・ラグ)とも呼ばれる、マニア垂涎のラグがあります。
明時代の、荘厳なまでの蓮花文様のラグです。
|Louis Comfort Tiffany (1848〜1933)
インペリアル・イエロー(黄金)に輝く”Tiffany Rug”の名称の由来は、かつての所有者ルイス・カムフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany:以下、”L.C.ティファニー”)の名前から来ています。
水色のboxで有名な宝飾店、TIFFANY and Co.の創業者チャールズ・ルイス・ティファニーの息子です。
現在のTIFFANY and Co.は、1837年に創業者のチャールズ・ルイス・ティファニーが友人のジョン・B・ヤングとともにニューヨークのブロードウェイに店を開いたのが始まりで、主に中国のアンティークや高級雑貨を扱っていました。
L.C.ティファニーはそのような環境の中、アジア、とりわけ中国や日本の文化芸術に強く惹かれていきます。そして、家業の宝飾業の分野よりむしろ芸術家、室内装飾家として名を馳せ、アメリカにおけるアールヌーボーの第一人者となります。
|“Light Comes from the East”
L.C.ティファニーは、自身を「色彩を重んじる芸術家」としており、生涯のうちの多くの時間、世界各地を旅して各地の宝石や家具、木工品や絵画を蒐集することで新たなデザインのヒントを求めました。
L.C.ティファニーのニューヨーク・ロングアイランドの自邸:Laurelton Hallには、”Native American room”などのほかに、”Chinese Room”、“Japanese Room”という部屋があり、東洋の芸術品で溢れていました。
彼が手掛けたアールヌーボーの作品群にはしばしば東洋美術の色彩にインスパイアされたものが多く見られますが、彼の個人コレクションや中国美術・日本美術への情熱の深さについては、あまり知られてはいません。
19世紀後半、多くのアメリカの芸術家にとって東洋(the East)の芸術が一過性の流行だったのに対し、L.C.ティファニーにとっては生涯情熱を傾けるものであり続けました。
|クラシカル・チャイニーズ・ラグとの邂逅
時は1910年代。
2022年8月1日配信のメールマガジンでもご紹介しましたが、中国では清王朝が崩壊し、王宮である紫禁城の調度品の品々の一部が、欧米や日本の古美術商(House of Yamanaka=山中商会)の仲介により欧米のマーケットに紹介するやいなや上流階級のひとびとの羨望の的となります。
羨望の眼差しを向けたセレブリティのひとりが、今回の主人公L.C.ティファニー。
1895年からブロードウェイに店を開いていたHouse of Yamanakaから、紫禁城および満州の王宮を飾っていた調度品を入手します。
それが、L.C.ティファニーとクラシカル・チャイニーズ・ラグとの出逢いでした。
「色彩」に人並外れた感覚を持っていた彼が、神々しいインペリアル・イエローに心をわしづかみにされたのは想像に難くありません。
| Tiffany Collection
L.C.ティファニーは、1918年、次世代の芸術家たちに活躍の場と自由を与えることを目的とし、Louis Comfort Tiffany財団を設立します。そして、広大な土地と、生涯を通じて蒐集した膨大なコレクションを含むLaurelton Hallの自宅財産を財団に寄付しました。
財団設立のもうひとつの目的は、コレクションを保存することでしたが、1933年のL.C.ティファニー没後、Laurelton Hallの維持管理が困難となり、1945年以降、財団は全ての財産をオークションで売却して現金化する苦渋の決断を余儀なくされます。
こうしてオークションによって現金化された財産は、芸術を学ぶ学生たちの教育援助資金として使われ、結果的に、L.C.ティファニーが望んだ目的の使途となりました。
1946年にニューヨークで行われたオークションでは、彼自身の作品を含むコレクションが公開されました。
広範囲に及ぶラグも注目を浴び、オリエンタルラグ、毛皮のラグのほかに、彼自身の設立した「Tiffany Studios」がデザイン・制作したラグも含まれていたそうです。
オークションの様子を写した下記写真の左下部に、伝説の“Tiffany Rug”が見て取れます。
|現代に蘇った“Tiffany Rug”
現在、MUNI CARPETSでは、メトロポリタン美術館に所蔵されている同類の作品を参考に再現した”Tiffany Rug”がご覧頂けます。Covid-19の数年を経て、蘭州にある工房から織りあがってきたその作品は、とりわけ黄色の発色が素晴らしく、かつて「インペリアル・イエロー」と呼ばれた鮮やかで高貴なクラシカル・チャイニーズ・ラグに限りなく近い、神々しいばかりの仕上がりです。
L.C.ティファニーも惹かれたであろう鮮やかな黄色、インペリアル・イエロー。
実は長年研究を重ねつつも、出したくても出せなかった色でした。
工房・漢氈居では、Covid-19の期間もこの色を再現するための努力を脈々と続けてくれており、この度、MUNIの特別なラインであるインペリアルラインとして、満を持して皆さまにお披露目が叶うこととなりました。
南青山本店、倉敷本社店にてご覧いただけますので、ご興味おありの方は事前にご連絡頂けましたら、ご準備させて頂きます。(2022年12月1日現在)
* * *
IMPERIAL LINE展のお知らせ
2022年11月18日
IMPERIAL LINE(インペリアルライン)は、創業時よりMUNI CARPETSが大切に作り続けている、
16〜18世紀の中国宮廷絨毯を、できるだけ近いかたちで再現している作品群です。
当時の優雅で煌びやかな暮らしに想いを馳せながら織り上げたカーペットは、
幻の技術を現代に蘇らせたMUNIの技巧を最もご堪能いただける芸術作品になります。
このコロナ禍を経て、わずかではありますがその新作が織り上がってまいりました。
30年に及ぶ長年の研究と、織りや染色、下絵にいたるまで、
創意工夫を続ける職人たちの巧みな技は、ますます円熟味を増しています。
私たちMUNIスタッフも待ちに待った新作です。
MUNIでしか見られない宮廷絨毯。
世界一華やかで洗練された時代の中国文化の「美の世界」を是非ご体感ください。
展示はMUNI南青山本店から始まり、MUNI倉敷店に巡回いたします。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。
THE IMPERIAL
◆MUNI南青山本店
会期:11月23日(水・祝)~28日(月) 11~18時
定休日:毎週火曜
TEL (03)5414-1362
◆MUNI倉敷本社店
会期:12月8日(木))~12日(月) 10~18時
定休日:毎週火・水曜
TEL (086)426-6226
Life with MUNI 【ご納品事例】
2022年11月13日
この度、アンティークや絵画、エミール・ガレなどのアートに大変造詣の深いI様ご夫妻にお引っ越しを期に、リビング用のカーペットを探しにご来店いただきました。
I様ご夫妻は元々アンティークのカーペットにも造詣が深く、さまざまな国の100年以上経過したアーンティーク・カーペットをお部屋の随所にお使いになられていました。
リビングにはコレクションの赤色が基調となった絵画的なデザインのカーペットをお設されており、ここのところ、見ているとだんだん疲れるようになってこられたとのことで、シンプルな無地のようなカーペットに敷き変えたいというご要望でした。
そして、25年前に初めてMUNIをお求め頂いてから、ずっと大きいサイズのカーペットを欲しいと思ってくださっていたとお話しくださいました。
この度お選びいただいたのは、ベージュの地色に淡く幾何学の梅紋様が浮かび上がる、ブルーの雷文がアクセントになった作品です。
お部屋はタワーマンションの上階、美しくディスプレイされたガレやアンティークバカラ、そして家具はイタリアの名門ポルトローナ・フラウやイギリスのアンティーク家具がミックスされ独特の世界を放っています。
そして、コレクションのペルシャのアンティークカーペットとMUNIのカーペットも前からそこにあるように調和し、お部屋全体をまとめています。
お部屋にお設させていただいたと同時に「わー、明るくなって広く見えるわ!」また「心が静まるね」とお喜びいただきました。
ご主人様にコーヒーを淹れていただき、窓辺のポルトローナフラウの丸いソファーで奥様の陶芸のお話や、ご主人の趣味のお話など束の間でしたが、私たちも至福の時を過ごさせていただきました。
そして、帰り際に、奥様から、「MUNIさん、やっと夢が叶いました。ご縁をありがとう。」
と、仰しゃっていただき、胸が熱くなりました。
お客様とカーペットを通してこのように心の交流をさせていただけることに感謝の気持ちでいっぱいです。
工房「漢氈居」Bill Zhang氏来日
2022年11月12日
news letter vol.36 : 特筆すべきインテリアデザイナーたちとチャイニーズ・ラグ
2022年11月2日
MUNIでは、月に1度メールマガジンをお届けしています。
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MUNI南青山店からほど近い表参道には、LOUIS VUITTON、ARMANI、CHANEL、GUCCI、HERMES、Ralph Laurenなど世界のラグジュアリーブランドが軒を連ねています。ウィンドウには暖かなアウターがディスプレイされ、その華やかな雰囲気に、仕事帰りに通りをそぞろ歩くだけでも気分が高揚してきます。
|美学の延長線上である住まい
ブランドショップを訪れたときに感じる高揚感を作り上げているものは、商品である服やバッグ、靴だけではありません。店舗の設え、家具の配置の仕方、小物使いや飾られている花など、その空間自体に魅力が詰まっています。
例えば、ラグジュアリーブランドのひとつ、ARMANIは、2000年にARMANI|CASAというプロジェクトを発表しました。これは、デザイナーのジョルジオ アルマーニ自身が、住まいを美しく装飾することへの憧れから、自らのビジョンや美学をインテリアデザインの領域にまで拡げ、トータルライフスタイルを提案するプロジェクトを構築したもので、ファッションの領域を超えて自身が理想とする美学の延長線上に位置づけたものだそうです。
そんな「理想の美学の延長線上たる住まい」を表現する天才ともいえる、世界のカリスマ的インテリアデザイナーたちをご紹介していきます。
|特筆すべきインテリアデザイナーたちとチャイニーズ・ラグ
1:PETER MARINO ピーター マリノ
上記に挙げたイタリアン・モードの巨匠ジョルジオ アルマーニは、世界各地に自邸を持っていましたが、彼の創作の基地とも言えるミラノの自邸のインテリアデザインを手がけたのは、ピーター マリノ(Peter Marino)。
ピーターマリノは世界のハイブランドのフラッグシップショップ(旗艦店)を手がける、今をときめくインテリアデザイナーの一人です。日本では銀座のCHANELや、BVLGARIなどの店舗を手がけたことで有名です。
1980年代、そのピーター マリノがジョルジオ アルマーニの依頼を受け表現したのは最も優雅で洗練された時代・1930年代の香り漂うシンプル・ラグジュアリーでした。選んだのは、1930年代のフランスのインテリアデザイナー、ジャン・ミッシェル・フランク(Jean Michael Frank)の家具と、そして、チャイニーズ・ラグ。シンプルな西洋のモダンな家具と空間をベースに、東洋の優雅な伝統美が融合されたラグジュアリーな空間を実現しました。
2:FRANCES ELKINS (1888-1953) フランセス エルキンス
20世紀初頭には、それまでの様式化されていたインテリアから、さまざまな国や時代をミックスした「エクレクティック(折衷)スタイル」を提唱した立役者がいました。
アメリカ人インテリアデザイナー、フランセス エルキンス(Frances Elkins)です。
エルキンスは1908年から1911年の間、ヨーロッパを精力的に回るなかで建築などについての強い影響を受けました。
その滞在中、フランスの著名なインテリアデザイナーであり家具デザイナーである ジャン・ミッシェル・フランク (Jean Michael Frank) やスイスの彫刻家アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)と出逢い、エルキンスは、その後彼らに調度品を制作してもらうこととなります。
そしてエルキンスとの仕事が、ジャン・ミッシェル・フランク、アルベルト・ジャコメッティの二人のアメリカでのキャリアを押し上げました。
1930年代に入りエルキンスのキャリアは大きく開花しました。彼女は、特別にデザインしたpalazzo(館)にて、数々のスタイリッシュで文化的なヨーロッパの友人たちをもてなしました。そのなかには、サルバドール・ダリやココ・シャネルもいました。
エルキンスもまた、モダンでラグジュアリーな設えに欠かせないアイテムとして、東洋の伝統美を表現するためにチャイニーズ・ラグを取り入れていました。
エルキンスが提唱した洗練されたスタイルは、現代のインテリアデザイナーたちに多大な影響を与え、現在では普遍的なスタイルとして世界中で取り入れられています。
3:MICHAEL S SMITH マイケル スミス
アメリカのインテリアデザイナーTop 10に選ばれ、オバマ大統領時代のホワイトハウスの住まいも手掛けたのが、L.A.の超カリスマ的存在マイケル スミス(Michael S Smith)。上述のフランセス エルキンスの組み合わせた膨大なデザインやスタイルから、今でもインスピレーションを得ているといいます。
「そこに住む人を思わせる部屋」をモットーにデザインされたラグジュアリーな空間は、L.A.に限らずN.Yのセレブリティにも絶大なる人気があります。そんなマイケル・スミスが彼自身の館に選んだのは、これまたチャイニーズ・ラグ。
ここでも、西洋のヴィンテージ・モダンをベースに、東洋の伝統美を取り入れることで、モダンで、よりラグジュアリーな空間を実現しています。 チャイニーズ・ラグを取り入れたこのスタイルは1930年代のエルキンス時代から続くラグジュアリーのお手本となっているのです。
4:THOMAS O’BRIEN トーマス オブライエン
最後にご紹介するのは、ニューヨークを拠点に活躍し、かつてラルフローレンのフラッグシップショップなどのインテリアデザインを手がけた実績があり、自身のインテリアブランドも展開するトーマス オブライエン(Thomas O’Brien)。
彼のデザインはニューヨーカーらしい、重厚さと、モダンクラシカルな、様式にとらわれない「エクレクティック」で表現されています。
彼がインテリアデザインを進めていく際、まずカーペットを決めることから始めるといいます。それだけカーペットはインテリアの印象を方向づけるからなのです。
下の写真では、たっぷりとした余白に中国の伝統的な龍の意匠のカーペットが、コロニアルスタイルの椅子や18世紀のロココ調の椅子などを、モダンかつシックにまとめあげる役割をしています。
モードの世界にも精通したオブライエンならではの軽快なカッコ良さが魅力です。
余談になりますが、表参道のラルフローレンでも各コーナーごとにヴィンテージカーペットが惜しげなく敷かれており、またブルーアンドホワイトのジンジャーポットなどの小物が、ラルフがイメージするアメリカンラグジュアリーを表現しています。
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11月 祝日の営業について
2022年10月31日
シミ取りワークショップ開催のお知らせ_MUNI南青山本店より
2022年10月29日
街路樹も鮮やかな赤やイエローに色づきだし、朝夕の冷え込みから少しずつ冬の足音を感じるようになりました。
そろそろ、ホリディシーズンの準備を始めている方も多いのでは…と思います。
家族や友人が集うにぎやかで楽しい時間、お部屋(カーペット?)もきれいにして気持ちよく迎えたいですよね?
MUNI南青山本店では、毎月1回、カーペットのシミ取りワークショップを開催しています。
カーペットにコーヒーやワインをこぼしてしまった時のお手入れ方法を、
簡単にわかりやすくご説明いたします。
知っていれば安心!
気づかず付いてしまってそのままになっていたシミも、お手入れしてさっぱりさせましょう!
ご参加のかたには、プレゼントをご用意してお待ちしております。
是非お気軽にご参加ください。
■日時
11月26日(土) 13時半~14時半
12月8日(木) 13時半~14時半
■場所
MUNI南青山本店
港区南青山4-1-15 ベルテ南青山102
■完全予約制(定員あり)
■お申し込み先
TEL:03-5414-1362
Mail:gallery@muni.co.jp
Life with MUNI “男の部屋”
2022年10月16日
インテリアに確固たるこだわりをお持ちのK様。
フランク・ロイド・ライトのテーブルやバタフライスツールなど洗練されたデザインの家具をお持ちかと思えば、金箔貼りの菖蒲の日本画を飾られるなど、海外の雑誌のようなしつらえをされています。
コロナ禍となり、在宅ご勤務を余儀なくされて久しいとお伺いしておりましたが、
先日、明の椅子などとともにMUNIのクッションで彩りを添えてくださっているワークスペースのお写真をお送りくださいました。
男性らしい、カッコいい色使いのなかに、いきいきとしたグリーンが生い茂り、柔らかな日差しが入るお部屋。
K様は普段は寡黙でご自身のことをあまり語られませんが、感性豊かなお部屋を拝見し、さらにモノや美に対する K様の向き合い方の一端を垣間見せて頂いた気が致します。
Life with MUNI
2022年10月10日
ご夫婦のご結婚記念にMUNIをお求めくださったK様。
お求め頂いたのは、今年35周年を迎えたMUNIが創業してまだ数年の頃です。
27年の年月を経て、ご自宅のご新築に際し新たなカーペットをお玄関に迎え入れてくださり、お写真とともに、素敵なストーリーをお寄せくださいましたのでご紹介をいたします。
K様ご家族のものがたりの傍らにいつもMUNIがあったことに想いを馳せます。
そして、「モノ」を超えてご家族の一員として愛着を持ってくださっている様子がうかがえ、スタッフとして心から嬉しく拝読しました。
K様、こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます。
———————
(K様からのお手紙)
「我が家に来てくれた三つ目のMUNI♪
これからまた長い時間を一緒に過ごせるのが嬉しいです。
玄関にMUNIが在ることで、行ってらっしゃいと、お帰りなさいがものすごい存在感な感覚です。
27年前、私達夫婦の門出の記念としてMUNIのカーペットを購入させて頂き、二人の息子を授かり夢中で育てて来た二十数年…。
二人とも成人し、巣立って行く年齢となる今日この頃。
新たにもうひとつMUNIが生活に加わってくれ、癒しや勇気を与えてくれます。
長いご縁に感謝します。
またこれからもどうぞよろしくお願いします。」
news letter vol.35 : オリエンタルカーペット鑑賞のツボ
2022年10月1日
MUNIでは、月に1度メールマガジンをお届けしています。
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“オリエンタルカーペットを鑑賞する”という文化は、元々は欧米に始まります。
100年以上前に作られたアンティークカーペットに見られる、機械や化学染料を使わず丁寧に作られた「染織の美」は、絵画やその他の美術品と並ぶ見どころがあるのです。
デザインはもとより、手紡ぎの糸ならではの味わいや日光による退色や、色の深まりなどです。
このように美術工芸品の美を愛でる習慣は日本でもあり、古来より、手描きの染付や手びねりの茶碗の、ひとつひとつの味わいを鑑賞しました。
偶然によって生まれた釉薬の変化やヒビなどを、茶人たちは「景色」として愛で、相応しい【銘】をつけました。そしてそれが、鑑賞におけるひとつのポイントともなります。なんとも風流で粋な文化です。
|手仕事によるものづくりを続ける理由
私どもMUNI CARPETSが、明末期から清初期の宮廷絨毯=クラシカル・チャイニーズラグの伝統を引き継ぐことは、往時の製法により生みだされる「偶然性の美」、「人智を超えた美」を追求することに他なりません。
MUNIの絨毯は、プレミアムウールを手で紡ぎ、天然の染料で染め、手結びにより織り上げていることはかねてよりお伝えしているとおりですが、それらを採用している理由について、これまでなかなかお伝えする機会がありませんでした。
それらを採用しているのは、単に往時の製法であるからということ以上に、ひとつひとつ表情の異なる、美しい個性ある作品を生むために必要なプロセスであるからです。
手紡ぎした糸には太細が生まれるため、織りあがった絨毯に美しい「景色」を与えます。均一的な量産のプロダクトに囲まれているいま、いびつ、とか、均一でない、と感じられるものがあるかも知れません。
しかしながら、私どもMUNIが目指すところは、画一的で工業的なものづくりではなく、ひとつひとつ違って当然の、そしてそれが魅力である、手仕事によるものづくりであり、それにより生まれる「美」なのです。
偶然性により生まれる「景色」。それこそが、今回お伝えしたい、鑑賞のツボです。
|其の一: アブラッシュという景色
「景色」といっても、ではどういった「景色」が見どころなのかを、具体的にお伝えしていきましょう。
画像は、ホワイトのフィールドに藍の草龍のデザイン(Design No.041(801))。
潔い白と藍のコントラストが人気のデザインですが、ただ白いだけではありません。
この作品のフィールドに、横にうっすらと筋状に入る「景色」がご覧になれますか?この「景色」は手紡ぎした糸の太細が生む現象で、【アブラッシュ】と呼ばれます。
一部に入ることもあれば、全体に入ることもあります。
染色用語なので普段あまり耳にすることがない言葉かも知れませんが、アブラッシュは手織り絨毯の証。
欧米では、アブラッシュが入っていることが上質な絨毯の評価ともなります。
MUNIの絨毯は天然の染料で染めあげるため、温度・湿度などにより染め上がりの色はその時々の一期一会。
一期一会の色が糸の太い箇所、細い箇所に入り込み、独特の美しいアブラッシュとなります。
機械織りでは決して生まれないものであり、自然の賜物なので、アブラッシュがどのように出るかは、織りあがってみないと判りません。
まさに「神のみぞ知る」、偶然性により生まれる景色です。
とりわけ、Design No.041(801)のフィールドは、染料で染めていない羊の原毛を使っています。
羊には、真っ白だけでなく、グレイやブラウン、黒い毛など様々な種類が居ますね?
白い羊であっても、グレイやブラウンの毛が混じっており、織りあがったときに得も言われぬアブラッシュが浮かび上がります。
このホワイトのフィールドの景色に、【刷毛目】【三島手】【雲海】あるいは【石庭】などの銘がついていたら、、、どうでしょう?
龍がより生き生きと見えませんか?
もう一枚、貴重なアブラッシュが出ている作品をご紹介してみましょう。
Design No.009Fです。
この一枚には、淡いピンク色のフィールドに太陽の光を受けてきらきらと揺らぐ【水面(みなも)】のような、なんともレアなアブラッシュが生まれています。
使い込んでいくほどに艶が増し、よりきらきらとした表情になっていく一枚です。
フィールドの部分を拡大して見てみます。
【水面】がご覧いただけるでしょうか。
優しい印象のこの作品には、【水面の蓮】という銘をつけました。
この銘から、皆さんならどんな季節のどんな情景を思い浮かべますか?
其の二: 天然染料の経年変化の美しさ
次にご紹介する鑑賞のツボは、「天然染料の経年変化」です。
目にも鮮やかなこちらの作品。
ギャラリーで新品の状態を目にしたら、「んーこれは好みじゃないかな」と候補から外される方が多いかも知れません。
ところがこの色の取り合わせは、10年後、驚く変化を見せます。
かなり鮮やかな印象を与えている珊瑚のようなオレンジは、柿色のように。
元気良い黄色は、落ち着きのある象牙のように。
すべての色が溶け合い、まるで天真爛漫な少女が、しっとりした大人の女性に成長するかのようです。
どの作品もそうですが、新品の状態は【未完成】なんです、と店頭でよくお伝えしています。使っていくことで育てて頂くのです、と。
艶や柔らかさもそうですが、色合いについては、10年後、20年後の美しい変化を狙って制作しているのです。
ですから、新品の状態でご覧になっている色は、最終形ではありません。
「この色はどのように変化していくのかな。」と、未来の美しい姿を想像しながらご覧になってみてください。
|100年後のアンティークを見据えて
100年未満のものはヴィンテージ。
100年を越えないとアンティークと呼べないと言います。
1987年にスタートしたMUNIは、現在創業35年。
創業当初の作品もいまはまだ「ヴィンテージ」かも知れません。
しかし、MUNIのものづくりは、「アンティーク」を見据えています。
確固としたものづくりが証明されるのは、100年後。
ただ古いだけのアンティークではなく、美しく、かっこいいアンティークを目指して。
今から楽しみでなりません。
* * *