MUNI CARPETS

news letter vol.45 : アイデンティティとしての日本の家紋

2023年8月2日


MUNIでは、月に1度メールマガジンをお届けしています。
その内容をこちらでも紹介させていただきます。
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世界に誇るデザインとしての家紋

 前職のとき、東南アジアの政府高官の方に、
「Would you do me a favor?  (お願いがあるのですが)」
と声掛けされたことがありました。

一体どんなお願いをされるのかと思いましたら、
「大きな本屋に連れて行って欲しい」と仰るのです。

お嬢様がデザインの勉強をしているので、日本の家紋(family crests/family emblems)の本をお土産に買いたいのだと。日本の家紋は、世界に誇るべき素晴らしいデザインだ、とも。
フランスのラグジュアリーブランド、ルイ・ヴィトンのモノグラムデザインは日本の家紋がルーツになっているというのは有名なお話ですね。
それ以来、私はすっかり奥深き家紋の世界の虜になりました。

ルイ・ヴィトンのモノグラムデザイン
(画像:ルイ・ヴィトン社カタログ)

Identity (アイデンティティ) としての家紋

 西洋における紋章は王族や貴族など、地位の高いひとだけが所有を許されるものですが、日本で平安時代末期に貴族・武士から興った家紋は、江戸時代になると庶民にも広まります。

江戸時代末まで庶民に許されなかった苗字とは違い、シンボルマークとしての家紋は庶民にも許されていたのです。
塗り物の膳や椀、提灯やつづらなどの日用用具にも各々の家紋をあしらい、一族結束の象徴(シンボル)、家族・同族のアイデンティティを表すものでした。
家紋のモチーフは、「植物紋」「動物紋」「自然現象紋」「建造物紋」「器物紋」「文様・図象紋」「文字・図案紋」」に大別され、バリエーションは2万とも2万5千にのぼるとも言われます。

 現代の日本では、家紋は正装の紋付や墓石にしか見られなくなり、実際、ご自身の家紋を把握していない方も相当数いらっしゃいます。いえ、ご存知ない方のほうが多いかも知れません。 
MUNIスタッフにアンケートを取ってみましたところ、知っている人、知らない人、親御さんに訊いて判った人の割合がそれぞれ同じくらいでした。

折角なのでMUNIスタッフの家紋を下記に集合させてみました。
それぞれの詳細は割愛させていただきますが、家紋を見ればその家系の出身地域やルーツがおおよそ判ると言われ、5つのサンプリングだけでもバラエティに富みます。


 個人的な話で恐縮ですが、結婚したとき、嫁ぎ先の紋を着物に入れたいと思い、夫に家紋を訊いたのですが判らず。さらに義理の母に訊いても、、判らず。

当時100歳近かった義理の祖母に訊いてようやく家紋が判りました。
ようやく判った紋は、「四方木瓜に違い鷹の羽(しほうもっこうにちがいたかのは)」という紋(下記左)。
その紋を目にし、とても嬉しかったのを記憶しています。
実家の紋である「丸に違い鷹の羽」(下記右)を内包しているよう見えたからです。
長年育った実家を全く離れたわけではないような感覚を覚えました。
嬉しくて、いろんな着物に、染めで、縫いで、紋を入れたのは言うまでもありません(笑)。

   私は関東(東日本)の出身ですが、関西を中心とする西日本では、女性は「女紋」と言って父方の紋ではなく、母方の紋を嫁ぎ先に持っていく風習があるようですね。西日本でもその風習がある地域とない地域があります。祖母→母→娘へと女性に伝わる紋が存在するというのも興味深い点です。


 MUNIのカーペットの文様が、単なるデザインではなくひとつひとつ意味を持つのと同様、日本の家紋も単なるデザインにとどまらず、一族(Family)のアイデンティティを持っています。

もし、ご自身の家紋をご存知ない方がいらっしゃいましたら、帰省の折、また墓参などの折に確認されてみてはいかがでしょうか?ご自身や、一族のルーツを知るきかっけになるかも知れません。

 大人の夏休み自由研究のススメ、でした。
今号も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
どうぞ素敵な夏をお過ごしくださいませ。


(参考文献)

『日本の家紋大全』 本田總一郎監修 梧桐書院発行
『家紋 知れば知るほど』 丹羽基二監修 実業之日本社発行

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