news letter vol.67: “清雅”という美意識
2025年7月1日
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昨今の中国、とりわけ若い世代のなかで、「宋式美学」というものが熱い広がりを見せているそうです。宋式美学、宋代美学と検索すると実に多くの画像が出てきて驚かされます。
宋式=宋時代のスタイルであり、宋式美学とは、中国の宋代に形成された芸術や美意識を指します。
唐時代までの貴族文化に代わり、宋時代は士大夫(科挙試験を目指して学問を積み、官僚となった人々)が学問や芸術を担うようになりました。
そんな宋代の文化、文学、哲学、科学、経済の発展を背景に育まれた宋式美学は、それ以前の唐代や五代十国時代の華美を旨とする美学とは真逆の、簡素で自然を尊重する独特の美を追求するものでした。そしてそこには、「静雅」つまり静かでありながら内面からにじみ出る落ち着きや気品、単なる外観の美しさだけではなく、精神的な豊かさを内包していました。
シンプルなフォルム、青の一語では表すことができない「汝窯青磁」も、宋時代に生まれたもののひとつです。単色・無文様でその質感を追求したと言われます。

また、南宋の時代の山水画には、余白の多い情緒豊かな景観に数少ないモチーフを印象的に配置することにより内容を象徴的に示すような優品が多くあります。
そのことに象徴されるように、シンプルで無駄のないデザイン、そして余白の美を感じる洗練されたテイストは、現代の住空間に取り入れやすく、精神的な豊かさ、内面の静寂を求める層に支持されているようです。

宋代美学を引き継いだのが明?
北宋・南宋を含めると300年超続いた漢民族による王朝である「宋」は、モンゴルのフビライ・ハンの「元」に征服され、そこから100年近くモンゴル民族による統治が続きます。
そして、元の帝位の相続争いや疫災の蔓延のなか、朱元璋(洪武帝)が建国したのが明であり、再び興った漢民族による王朝です。明の人々が、自分たちの民族の祖先である宋の時代の文化を再興しようとしたことは想像に難くありません。
MUNI CARPETSのルーツである明代は、陶磁器や、書画、染織などの美術において極致に到達したと言われる”清雅”を旨とした宋代の美意識が、さらに昇華された時代と言ってよいでしょう。

日本の侘び寂びの中に生き続ける宋代美学
冒頭で、中国で宋代美学がにわかに脚光を浴びているとお伝えしましたが、中国の若者たちが熱い視線を送り、傾倒しているのはなんと、日本の“侘び寂び”文化です。
侘び:質素なものに趣を見出す
寂び:時間の経過による変化に美しさを感じる
侘び寂び文化が醸成されたのは、安土桃山時代から江戸時代。
当時の日本にとって圧倒的な先進国であった明からの“清雅”の美意識が日本にももたらされ、茶の湯、美術、建築など日本独自の文化となっていきました。茶人たちが“唐物”、“名物裂”として取り入れたのは、元でも清でもなく、明代の器物でした。
現代の中国には引き継がれなかった宋代美学が、日本の独自文化として唯一日本に受け継がれ、現在逆に中国から脚光を浴びているのは興味深い事実です。
そんな明代のカーペットを復活させ、受け継いでいるMUNIのカーペット。
倉敷の旧家で生まれ育ったMUNIオーナーの楠戸だからこそ、宋代の美学を引き継いだ明代のカーペットを復活させることが出来たと言っても過言ではないかも知れません。

【参考文献】
『神品至宝』台北國立故宮博物院 図録/2014年 東京国立博物館
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日本の方にもお愉しみ頂ける内容となっておりますので、ご興味おありの方は是非覗いてみて下さい。「宋式美学」のインテリアもたくさん出てきます。
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