MUNI CARPETS

news letter vol.61 : 年末ご挨拶に替えて

2024年12月27日

 2024年も残すところわずかとなりました。皆さま気忙しくお過ごしと存じます。
今年も一年、MUNI CARPETSをご愛顧下さりありがとうございました。心より御礼申し上げます。

 楠戸謙二がMUNI CARPETSを立ち上げたのは1989年。
”クラシカル・チャイニーズ・ラグ”と呼ばれる、明朝末期から清朝初期に宮廷に献上された幻の絨毯の存在を知り強く惹かれるも、中国王朝の衰退とともにその制作技術は途絶えていました。
そこで楠戸は、張 力新(Bill Zhang)氏と二人三脚で、シルクロード文化の結晶であり失われた至宝であるクラシカル・チャイニーズ・ラグを復興するための研究を重ねてきました。
往時の作品をより忠実に再現するため、アンティークの作品や文献を蒐集し、またメトロポリタン美術館の協力を得て調査研究を重ね、試行錯誤の末、手紡ぎ糸、植物染料による染色、古典的手結び制法、手鋏による仕上げなどの伝統技術を蘇らせることに成功しました。
以降、2024年の現在に至るまで、日進月歩、美しいカーペットを追求し制作を続けてまいりました。

無形文化遺産という勲章

無形文化遺産の認定証

 ただひたすらに「美」を追求し続けた35年。
中国の急速な経済発展とともに手織り絨毯の工房自体が消滅していくなか、MUNI CARPETSを生み出す「漢氈居」が中国国内で唯一、伝統製法を受け継ぐ工房となりました。

35年前当時は制作技術が途絶えていただけでなく、中国国内でもクラシカル・チャイニーズ・ラグの存在を知るひとはほんのひと握り。その文化的価値もなおざりにされていましたが、「漢氈居」の永年の工房の活動が評価され、2016年には甘粛省蘭州市の無形文化遺産の認定を受けました。さらに今年、2024年には甘粛省の無形文化遺産にも認定されました。
中国国内の自国文化への関心の高まりによって、国家の文化遺産となる日もそう遠くはないようです。

 楠戸謙二と張力新のふたりが始めた小さな工房の弛まぬあゆみが実を結んだ、2024年の嬉しいニュース。日頃、MUNIをご愛顧くださり支え続けてくださる皆さまへ、感謝を込めてのご報告です。

写真家・小川一真氏の撮影による紫禁城内部(1901年)
2000年に「発見」されるまで世界から忘れ去られていた
紫禁城の宮廷絨毯 撮影:張 力新

 清朝の衰退とともにその存在が忘れられていた宮廷絨毯。
MUNI CARPETSは、”Forgotten Carpets of the Forbidden City”(紫禁城の、忘れられた絨毯)を歴史に葬ることなく現代に蘇らせてきました。
その文化的価値をさらに広めるための種蒔きをしつつ、これまで抱いてきた想いを改めて強くし、また、誇り高き工房の職人たちの仕事に敬意を抱きながら、2025年に向けて胸をふくらませています。
工房代表 張 力新(Bill Zhang)氏のことばで年末のご挨拶を締めくくりたいと思います。

"日本と中国、二つの国の二人の個人として、
責任を持ってこのプロジェクトを進めようと決めました。
なぜなら、私たちは絨毯という伝統文化の重要性を他の誰よりも知っているからです。
伝統とは単なる職人の技術だけではありません。
先人の精神性をも汲み取り、受け継いでゆくこと。
それが伝統を守ることだと思います。
21世紀の今だからこそ、伝統を守り続けてゆく。
それが私の夢なのです。”

楠戸 謙二          張 力新


 皆さまと、皆さまの大切な方々のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。
どうぞ素晴らしい新年をお迎えください。

2024年12月27日

MUNI CARPETS
 楠戸 謙二
 スタッフ一同


MUNI CARPETSは12月27日(金)をもって年内の営業を終了させていただきました。
年明けは、全店1月4日(土)から営業致します。

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