MUNI CARPETS

news letter vol.24 : カーペットにまつわるお話 「宮廷献上品から美術館へ~そして“使うことが出来る美術品”へ」

2021年11月1日

MUNIでは、月に1度から2度メールマガジンをお届けしています。
その内容をこちらでも紹介させていただきます。

MUNI CARPETS  Imperial Line/  Design No. 021/ 明式如意文氈 

|宮廷献上品から欧米へ、そして美術館へ

 永い中国絨毯の歴史のなかでも一際気品に満ち、洗練された絨毯の一群。それが、日本の美術工芸にも深く影響を与えた明朝末期から清朝初期(16~18世紀)に宮廷への献上品として製織されていた、「クラシカル・チャイニーズ・ラグ」と呼ばれる幻の絨毯:MUNI CARPETSのルーツとなるものです。宮廷の中の限られた人物しか使用することが出来ない、大変希少なものでした。

 20世紀に入り、清王朝が衰退し、欧米列強によって陶磁器や絵画などの宝物と共に持ち出されたクラシカル・チャイニーズ・ラグは、欧米で初めて紹介されるやいなや上流階級の人々に羨望の眼差しで迎えられ、瞬く間にステイタスシンボルとなりました。それまでペルシャ絨毯を中心とした中東の絨毯しか目にしたことのなかった彼らにとって、その品格ある東洋の美は新鮮でモダンに映りました。その中には芸術家 ルイス・カムフォート・ティファニー、ファッションデザイナーの ココ・シャネル、建築家 フランク・ロイド・ライト、 実業家ジョン・D・ロックフェラーなどトップクリエイターやセレブリティーらが名を連ね、彼らのステイタスを表現する大切なアイテムとして用いられました。

『CLUTCH Magagine』 2017年10月号より

  このように時代を超えて世界を魅了したクラシカル・チャイニーズ・ラグですが、19世紀以降は次第にその東洋の伝統美が失われ、天津段通に代表される輸出用の商業主義のデザイン、機械や化学染料を使った大量生産によって、本来の伝統美を受け継ぐラグとは異なるものとして世界中に広まっていきました。  
16〜18世紀に制作されたクラシカル・チャイニーズ・ラグは、現在では世界の宝として、欧米の有名美術館に所蔵されるのみとなりました。

  欧米においては、手織絨毯は”美術品”に値します。クラシカル・チャイニーズ・ラグのみならず世界各地の逸品は、染織芸術品として欧米の名立たる美術館に収蔵されています。ニューヨークのメトロポリタン美術館や、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に行かれたことがある方も多いと思いますが、これら美術館は、世界中の希少な染織品の収蔵においてその名を馳せており、現代の私たちにその美しさを伝えてくれています。

|美術館収蔵品から、“使うことができる美術品”へ

メトロポリタン博物館にて。オーナー楠戸謙二。

 MUNIの成り立ちは、この世界的に貴重な染織文化を現代に蘇らせ、受け継ぐために事業を始めたことでした。往時の作品をより忠実に再現するためにアンティークの作品をMUNI独自に蒐集し、また一方でメトロポリタン美術館、ワシントンのテキスタイルミュージアム、北京故宮博物院などの協力を得て制作技術や文様の調査を行い、歴史研究をもとに長年制作を行ってきました。  このような調査研究と試行錯誤の末、手紡ぎや植物染料による染色、手結び等の伝統技術を蘇らせることに成功しました。また更にそうした伝統技術をブラッシュアップし、日本人の感性と美意識を吹き込むことで、現代の日本の生活のなかでより美しくモダンに、そして安全に心地良くお使い頂ける上質なカーペットとして、MUNI CARPETSは誕生しました。  ミュージアムピース(美術館収蔵品)であったクラシカル・チャイニーズ・ラグに息を吹き込み、“使うことのできる美術品”として生まれたのがMUNI CARPETSなのです。

 冒頭でご紹介した画像:Design No.021「明式如意文氈(Ruyi Cloud rug)」は、MUNIのなかでも特別な一枚。かのココ・シャネルもパリ カンボン通りの自身のサロンで使っていたこのデザインは、世界中のラグフリークの間でとりわけ珍重されているとともに、オーナーの楠戸謙二がメトロポリタン美術館にて調査研究の末に再現に成功した、特に思い入れのある一枚だからです。  「世界的に重要な伝統工芸の再生の成功を祈ります。」メトロポリタン美術館の東洋染織学芸主幹、故ジーン・マイリー氏から楠戸に宛てられた温かい励ましのメッセージは、今も楠戸の強い支えとなっています。

 かくして生まれた“使うことのできる美術品”が並ぶMUNIの店舗は、店というよりも、むしろ美術館としての位置づけといっても過言ではありません。
是非「美術館を訪れるように」、お気軽にMUNIの店内をお愉しみください。
美術館を後にするときに味わう感覚と同じように、必ずや、皆様の知的好奇心を刺激する嬉しい発見があるはずです。


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