news letter vol.23 : カーペットにまつわるお話 ~「古きに博く、今に通ず」~
2021年10月1日
MUNIでは、月に1度から2度メールマガジンをお届けしています。
その内容をこちらでも紹介させていただきます。
“博古”
「通今博古」(つうこんはくこ)という言葉をお聞きになったことがありますか?「古(ふる)きに博(ひろ)く、今に通ず」とも読みます。
”博古”ということばが最初に使われたのは、中国・北宋の時代に遡ります。 皇帝でありながら書画などにも極めて優れていたことで知られる北宋の皇帝 徽宗(きそう)。自ら大量の青銅器を蒐集した徽宗は、学者に命じてそれらを研究・整理させ、その成果として、1107年に『博古図(はっこず)』という書物を編纂させました。それは、膨大な数の青銅器を詳細に分類し、図まで掲載した本格的な古代青銅器の図録でしたが、徽宗は、古器物の蒐集・研究を通して、古きに学ぶ儒教の真のあり方を問うたのです。
徽宗以降は、古器物の蒐集と鑑賞自体が文人のステイタスを示す行為としてもてはやされ、時折開かれた古器物の鑑賞会は文人画の題材に好まれるほどになりますが、徽宗の目指した真の目的は薄れていきました。
後世に残す使命
北宋から時代は下り、西暦1636年、明(みん)から清(しん)に移行します。明王朝の崩壊と満州民族による清王朝の創建は、300年間続いた漢民族の終焉を意味し、中国の歴史において、政治的にも文化的にも重要な局面でした。その重要な局面=明から清へ移行する時期に、かつて徽宗が目指した、古いもの・先人から多くを学び、今のものごとに活かす、という考え方(「通今博古」)を後世に残すという使命をもって文様としての「博古文様」が確立しました。
まさにMUNIのカーペットに見られる文様がそれです。筆や墨入れなどの筆記用具・青銅器・磁器・楽器・囲碁盤などといった文人文化を象徴する古器物が描かれています。具象的な文様でありながら、写実ではなく、ユーモラスな表現をミックスした明代独特の表現が魅力的です。皆さまからは「宝尽くし」「お道具柄」とも呼ばれ、賑やかで人気の高いデザインです。
現代人の道しるべ
先行き不安で軸足さえどこに求めてよいか分からない現代。「通今博古」の精神に立ち返ることにより現在未来の光明を模索する手立てとしてみましょう、ということを、博古文様のカーペットが教えてくれています。
古きから学ぶ。
古いものは常に新しいのですね。
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