MUNI CARPETS

news letter vol.16: カーペットにまつわる話 ~失われた色を求めて~

2021年5月1日

MUNIでは、毎月2回ペースでメールマガジンをお届けしています。
こちらでもその内容を紹介させていただきます。


【失われた色を求めて】

 永い中国絨毯の歴史のなかで一際気品に満ち、洗練された絨毯の一群。それが、日本の美術工芸にも深く影響を与えた明朝末期から清朝初期(16~18世紀)に宮廷への献上品として製織された「クラシカル・チャイニーズ・ラグ」と呼ばれる絨毯、MUNI CARPETSのルーツです。

 清王朝の衰退とともに宮廷の奥深くで眠っていたクラシカル・チャイニーズ・ラグは、20世紀初頭、欧米で紹介されるやいなや上流階級の人々に羨望の眼差しで迎えられ、瞬く間にステイタスシンボルとなりました。
その品格ある東洋の美は、ルイス・カムフォート・ティファニーやココ・シャネル、フランク・ロイド・ライト、ジョン・D・ロックフェラーなど欧米のトップクリエイターやセレブリティーを時代を超えて魅了し、彼らの個性を表現する大切なアイテムとして用いられました。

 しかし、19世紀以降は次第に商業主義のデザイン、機械や化学染料を使った大量生産が台頭し、本来の東洋の伝統美を受け継ぐラグとは異なるものが世界中に広まっていきました。16〜18世紀に作られたオリジナルのクラシカル・チャイニーズ・ラグは、世界の至宝として欧米の有名美術館に所蔵されることになります。


【唯一無二の色】 

 クラシカル・チャイニーズ・ラグを彩っていた、植物から採取された染料。MUNIでは、16〜18世紀のオリジナルの染色方法に則してすべて植物染料を使用し、染色から仕上げまでの全工程において一切化学物質を使用せず制作しています。いまも昔も、そしてこれからも「サステイナブル」なものづくりなのです。
植物染料は、温度や湿度によって、また、糸の太細によっても染まり具合いが変わってくるため、仕上がりは二つと同じものがありません。
祁連(きれん)山脈の麓にあるMUNIの工房においては、祁連山脈からの雪解け水も、染料の発色に大きな影響を与えます。


 では実際、MUNI CARPETSのどの色がどんな染料で染められているのか、ご紹介していきましょう。

【青色系】  
 MUNIで最も多く使われる色、シグニチャーカラーと言ってよいブルー(青)は、全て「藍」で染め上げています。深い青、明るい青、浅い青、そして緑色にも藍を使います。MUNIの藍染めについては、また別の機会に改めて紹介させて頂きますね。

【茶色系】
 茶系、ベージュ系に使われるのは、主に、槐(えんじゅ)、橡(つるばみ)、胡桃、茶葉等。
「橡(つるばみ)」は、くぬぎの古名で、樹皮・根皮・実(どんぐり)の傘の部分を染料として使います。
MUNIで使われている茶色には、無染色の羊の毛「ナチュラルブラウンウール」もあります。

橡(つるばみ)


【黄色系】
 黄色系には、梔子(くちなし)、大黄(だいおう)、姜黄(きょうおう) 等。
「梔子」は、夏にかぐわしい香りを放つ白い花を咲かせる常緑低木。日本でも庭木としておなじみですね。花が終わった後にできる果実を細かく砕いて染料とします。栗きんとんの食用色素などにも使われている身近なものです。

梔子(くちなし)

「大黄」は、中国北西部の青海、甘粛、四川などの高地に野生または栽培されるタデ科の多年生草木で、漢方にも用いられます。正倉院に生薬としての大黄が現存しているそうです。大黄の根を細かくしたものを熱煎してできる煎汁は、金色に輝く高貴な色を染めあげます。

右:大黄(だいおいう)、左:蘇芳(すおう)

【赤色系】
 赤色系の染料は主に、蘇芳(すおう)、茜 等。
 「蘇芳」は、インド・マレー諸島原産のマメ科の小高木。
樹木の芯材を細かく砕き、熱煎して取り出した赤い色素は、黒味を帯びた赤色に染まります。日本でも奈良時代には既に南方から輸入した貴重な染料として使われていたとされ、江戸時代以前は上流階級しか身に着けられない高貴な色でした。

 自然の恵みを存分に享受しているMUNI CARPETS。
あらためて自然界に存在する色の豊かさを想います。MUNIを象徴する色「藍」については、この号では語りつくせませんので、また別の機会にご紹介させて頂きます。



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