"> news letter vol.68: 漢方薬で染めたカーペット – MUNI CARPETS

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news letter vol.68: 漢方薬で染めたカーペット

2025年8月1日

MUNIでは、月に1度メールマガジンをお届けしています。
その内容をこちらでも紹介させていただきます。
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薬として、宋から日本にもたらされたお茶

 鎌倉時代、のちに茶の湯文化となるお茶を日本に広めたとされる栄西(えいさい)。備中(現在の岡山県)出身の栄西は、中国(宋)に渡って禅宗とともに茶礼を学びました。
茶礼とは、禅寺において、僧侶たちが朝の座禅のあと、食事のあと、作務の休憩時、就寝前などに茶を飲むことで心と体を整える教え。

帰国後、栄西は臨済宗の宗祖となりますが、宋から帰国する際、茶種を持ち帰って植えたことが始まりで日本各地に茶の栽培が広まったことから、「茶祖」とも呼ばれます。
ただし、お茶といっても当時は嗜好品としてではなく、もっぱら薬として飲用されていました。

  仏教が全盛であった鎌倉時代の日本において禅宗という新興宗教を広めることはたやすいことではなかったため、栄西は禅宗を茶礼とともに広めるべく『喫茶養生記』という医学書を著します。 当時、病気の治療といえば祈祷が主流であったため、『喫茶養生記』は、実用的な医学が始まるきっかけにもつながりました。 

 このようにしてお茶は、栄西によって高価な“薬”として日本に広められ、お茶とともに宋からもたらされた焼物・天目茶碗を用いて、儀式としてうやうやしく飲まれるものでした。

油滴白縁天目碗 附 螺鈿天目台
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム

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(参考サイト)日本茶マガジン.com
座禅.com 

茶葉で染めたカーペット

宋代に日本に伝わった当時と同様、MUNIでは茶葉も染料として用いる

 これは中国茶を嗜まれる方にはおなじみの「餅茶(へいちゃ)」。茶葉を蒸して様々な形状に加工し、固めて乾燥させたものです。
前項にて、宋から日本に伝わったお茶がいかに貴重な薬であったかをお伝えしたところですが、実は、MUNI CARPETSの糸を染める染料としても「茶葉」が使われています。(上記画像右:茶葉染めのチェアラグ)
上記画像(左)は、糸を染める染料として調達した餅茶です。

  MUNI CARPETSでは、茶葉をはじめ、藍、槐(えんじゅ)、梔子(くちなし)、大黄(だいおう)等、全て「漢方薬」で糸を染めていること、ご存知でしたか?これらは、宋の時代から染料として用いられてきた漢方薬です。

【染料として用いている漢方薬の主な効能】
■ 槐(えんじゅ)・・・高血圧を防ぐ
■ 梔子(くちなし)・・・胆汁排泄促進作用 
■ 大黄(だいおう)・・・活血、清熱
等々


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(参考サイト)漢方生薬一覧

  MUNI CARPETSを生み出す工房「漢氈居」責任者の張 力新氏が中国全土を探し回って集めた漢方薬は50種類を超え、橡(つるばみ)=ドングリや梔子(くちなし)などの配合を変えながら、100色以上の糸色を染め分けています。

中国全土から集められた、染料となる漢方薬


藍も漢方薬なんです!

 MUNIの象徴的な染料である藍。
あまり知られていないかも知れませんが、藍も漢方薬なのです!
抗ウィルス作用がある漢方薬で「板藍根(ばんらんこん)」と呼ばれ、インフルエンザや扁桃腺炎、帯状疱疹、肝炎などの治療に欠かせないものとして珍重されています。
SARSやCOVID-19騒動の時には予防と治療に大活躍したと聞きます。
  そんな貴重な藍を染料として使用するMUNIでは、貴州省の専用の畑で、中国固有の藍を栽培し、昔ながらの甕で3か月熟成して発酵させて用います。

専用の藍畑(中国貴州省)
MUNIブルーを生み出す藍葉
藍葉から成分を抽出したペースト状の藍

|「本当に美しいもの」を追求したら漢方薬だった

 19世紀の中頃にドイツで化学染料が開発されて以降、安価で手軽な化学染料が世界中を席巻しました。
世界各地のカーペットのほとんどが化学染料で染色されるようになり、地理的にドイツに近いイラン(ペルシャ絨毯)も例外ではありませんでした。
そのときどきの気温や湿度、水などの環境で染め上がりが異なる天然染料は、画一的な仕上がりが求められる大量生産には向かなかったからです。

  しかし、化学染料が当たり前となった現代において、MUNI CARPETSのルーツである明時代のカーペットを再現すること、それは「古来の製法にこだわる」ことではなく、「本当に美しいもの」を求めた結果、化学染料ではなくて漢方薬である天然染料だった、ということなのです。
 カーペットを染めるために贅沢に使った漢方薬が、直接わたしたちの身体に対しての効能を持つわけではないのですが、染められたカーペットの、生命(いのち)を宿した色は、私たちを癒し、和ませ、そして使い込んで時を経るごとに深みを増していきます。

  MUNIの店頭にも、“漢方薬(染料)”の瓶を置いていますので、ご来店の折にはお手に取ってご覧になられてみて下さい。

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